函館市長 井上 博司殿                                2003年 8月 27 日
                                                      

                                       函館の新図書館にのぞむ会

                                          世話人代表 鎌鹿 隆美

                                          連絡先 函館市駒場町9−10
                                             自然倶楽部気付
                                             電話・fax 0138−31−5339

          
          「函館市中央図書館」の建設にかかわる再質問・要望および意見書

 

 貴職におかれましては、日ごろから市政にご精励の段まことに敬服しているところであります。
さて、当会が2003年1月28日付で提出しました「『函館市中央図書館』建設についての質問・要望および意見書」に
対して、6月4日付で函館市教育委員会から金山正智教育長名による文書回答をいただき、
回答趣旨のご説明もお聞きいたしましたが、残念ながら多くの重要な質問について未回答となっています。
また回答していただいた部分も総じて2002年6月に策定された基本計画の内容の繰り返しが多く、基本
計画策定後今日までの検討の結果が反映されたものとは思えないものです。
要望書を提出して以来約5カ月間、回答をお待ちしていた当会としてはまことに期待はずれといわざるをえません。
加えて、今回の回答書には重大な事実誤認も見受けられますので、未回答部分に対する再質問に併せて
以下の諸点について、再度、質問・要望および意見を提出するものです。

 関係者の皆様方にはご多忙中とは思いますが、問題の重要性・緊急性に鑑み、何卒迅速なご回答を
要望します。
とくに「はじめに」「T@AB」「U@HI」「V@BCDEF」の各項目については本来6月4日の時点で提示して
然るべきものと考えますので、可及的速やかにご回答いただきたく存じます。また、ご回答の際には、回答趣旨
その他について公開の場で、貴職自らもしくは決定権限を持った責任者が直接ご説明くださるとともに当会と
意見交換の場を設けられるよう、再度、強く要望するものです。

        
                     要  約

1.今回の回答で「基本計画の内容はおおむね実現できる」(生涯学習部長)とした根拠の明示。

2.残された課題をこなしていくにあたっての工程表の明示。

3.貸し出し冊数、人数の飛躍的増大を達成するための具他的方策の明示。とくにワークショップの
活用について再度の検討。

4.資料(図書)収集の基本方針の明示。

5.必要な職員数の確保(とくに司書資格者)についての方針の明示。

6.開館日数の増加、開館時間の延長、貸し出し者制限の廃止、特別整理期間の短縮などを
新図書館開館以前でも早急に実施。

7.検索サービスの充実・ネットワーク構築についての具体策の明示。

8.資料収集費の予算増額への方策の明示。

9.個人情報保護に関する誤った認識の訂正、条例改正の要望。

10.緑地率について基本設計で30%を確保したとする根拠の明示。

11. 敷地内樹木の保存・活用に関する考え方への疑問。

12. 駐車台数の積算根拠についての疑問。

13. 角地ブロックの建蔽率緩和についての再考。

14. 閲覧室のプライバシーと静穏性の確保についての疑問。

15. 再生可能性エネルギーの利用について見込み試算の提示。

16. 維持管理費・修繕費の見込み試算の提示。

 

 


                       本   文

 

はじめに(新たな質問事項)―「基本計画の内容はおおむね実現できる」とした根拠を明示して
いただきた
い。

 6月4日の回答趣旨説明で生涯学習部長(当時)・桜井健治氏は「基本計画に盛り込まれた内容はおおむね
現できる」としました。

 基本計画には函館市中央図書館(以下、「新図書館」とします)や地区図書室を含めた図書館全体について実現する
サービスの水準目標としてソフト、システム、ハード関連面で以下のような項目が挙げられ、一部は数字も示されています。
その多くは当会としてすでに1月に提出した「『函館市中央図書館』建設についての質問・要望および意見書」
(以下、「1月文書」とします)で質問・要望・意見を提出したところです。しかし、回答書では未回答であったり、
まったく不十分な内容にとどまっている現段階で、何をもって「おおむね」としているのか私たちには理解できません。

 基本計画が挙げている以下のような図書館サービス水準目標のうち、現段階でどの項目がどの程度実現できる
としたのでしょうか?具体的にお答えいただきたい。

 ・貸し出しサービスの活性化と利用拡大。

 ・専門的ニーズにも対応できる高度な知識と経験を持つ職員の配置による情報相談窓口の設置。

 ・開館時間の延長。

 ・就職、転職、職業能力開発等を支援するための資料・情報の提供。

 ・外国語による利用案内・レファレンスサービスの提供。

 ・高度で多様な学習機会の提供、講習会などの開催。

 ・中長期的な資料収集計画の検討。司書を中心にした職員による日常的な研鑚による適切な選書(収集)。

 ・市民や通勤・通学者にこだわらず、広く利用希望者を受け入れることの検討。

 ・ホームページによる多彩な情報の提供と自宅からの蔵書検索、予約・リクエスト、質問相談の受付。

 ・図書館職員と教育施設職員との情報の共有・交換。

 ・館長を補佐する職の新設、知的創作物の権利処理業務への対応準備。

 ・地域エネルギービジョンに基づく自然エネルギーの導入、省力化に配慮した施設の検討。

 ・開館3年前に新システム統括職員の配置、開館準備総括者の配置。

 ・建設準備段階からの専門職員の養成・研修計画の樹立。

 ・スタッフ・マニュアルの作成、職員・ボランティアの役割分担等の明確化。

 ・開館数カ月前からの利用者カードの事前登録の開始、図書館利用ガイドの作成、既存データの遡及入力。

 ・図書館条例・規則の改正、組織改変などの事前協議。

 

 表1 基本計画で掲げた函館市図書館サービスの水準目標(数値目標1)

 

図書館全体

中央館

地区図書室

年間貸出冊数

180万冊

1人当たり6.0冊

103万冊

77万冊

開架冊数

47万冊

23万冊(開館時20万冊)

24万冊

年間受入図書冊数

5万冊

.7万冊

.3万冊

年間購入図書冊数

.5万冊

.4万冊

.1万冊

雑誌購入点数(まず半数まで増)

410点(205点)

260点(130点)

150点(75点)

新聞購入点数

60紙

30紙

30紙

視聴覚資料点数

,6000点

,6000点

0点

職員等の人数(半数が司書資格)

概ね60人(30人)

概ね34人(17人)

概ね26人(13人)

 【注】『函館市中央図書館建設基本計画』p.49

 

 表2 基本計画で掲げた函館市中央図書館のその他の想定(数値目標2)

年間来館者数

閲覧座席数

駐輪場台数

駐車場台数

515,000人

525席

150台程度

160台程度

 【注】同p.59〜61の記述から表を作成。

 

 T ソフト面について

 

@     利用者増を図るための図書館の中身をよくする根本努力の提示―残課題について総括的な
工程表を明示していただきたい。

 回答は「管理運営内容や体制づくり」の「検討作業を進めているところであり、早い段階で一定の考え方を整理し、
ご検討を伺ってまいりたい」と答えるにとどまっています。口頭で「一定の考え方を整理」する「早い段階」が「今年の秋」で
あることを示しましたが、秋ではすでに実施設計も終局段階であり、本来、実施設計に反映させるべき内容が依然として
煮詰まっていないということになります。
また、「整理」とはどういう内容を意味するものなのか不明なので明らかにしていただきたい。
さらに、「整理」に回答後半年近くもかかるということは常識的に判断して今はまだ未整理であることを意味すると解釈するのが
妥当でしょう。
これは昨年11月に貴市生涯学習部と意見交換した際の発言と何ら変化がなく、以来回答までの7カ月間どのような
「検討作業を進めて」来たのか理解に苦しむところであり、疑問に思うところでもあります。
今後さらに半年余りも「整理」期間が必要とする根拠も理解できません。この期間に具体的に検討してきた内容を明らかに
していただきたい。
そして今後半年にわたり具体的に何をしようとしているのかを明らかにしていただきたい。回答の場の意見交換で当会が
求めたように、残っている課題を具体的に挙げた総括的な工程表をその都度の検討内容とリンクするかたちで早急に提示する
ことを強く求めます。

 

A     貸し出し冊数4.8倍、貸し出し人数14.3倍を実現する方策の提示―最大の重要事項で
あることを認識して方策を提示していただきたい。「ワークショップ」の必要性・有用性を認めながら
一方で理解を誤っている点を正し、早急に設置を求めます。

 回答はこれにまったく何らも答えていません。この方策を早急に示すことが新図書館の今後の成否を決する最大の重要事で
あることを認識して早急に再回答するように求めます。
一方で方策例として当会が採用検討を求めたワークショップ方式についても十分に理解をしているとは言いがたいと思います。
ワークショップ方式について回答は「中央図書館建設懇話会を設置し協議検討してきたのをはじめ、市議会の所管委員会、
図書館協議会、社会教育員の会議、さらにはシンポジウムの開催やアンケートの実施など、様々な形で可能な限り市民意見の
反映に努めてきた」「特に、建設懇話会につきましては、学識経験者や関係団体の代表の方、一般から公募した委員など、
各界各層の方々で構成しており、私どもとしては、ワークショップ方式の要素を採り入れた対応をしております」としていますが、
建設懇話会の設置・運用の実態はワークショップ方式とはまったく異なっています。
何よりも図書館のソフト、システム、ハードのすべての面にわたる実質的な決定権限(少なくとも集約意見を最大限尊重して
その実現に行政が努力する義務規定)を与えていないこと、論議内容をハード面に限定していること、構成員に図書館の専門
コンサルタントや設計者が加わっていないことなど、「ワークショップ方式の要素を採り入れた対応」にはまったくなっていません。

 また「市議会の所管委員会、図書館協議会、社会教育員の会議」はそれぞれの限定した機能を果たすために設けられた存在に
とどまります。さらには「シンポジウムの開催やアンケートの実施」をしたからといって「様々な形で可能な限り市民意見の反映に
努めてきた」ことにもなりません。一番肝要なのは市民が利用したいと思う図書館にすることを最大の眼目にするならば行政が
市民の意見を聞いたり、市民の意見を「反映」したりするだけではなく、市民の参加を保証し、それに向けて最大限の努力をする
ことです。市民参加を保証しないままの市民意見の「反映」はあくまでも限定的な意味しかなく、十分とは言えないということです。

 そして「私どもとしては、ワークショップ方式の要素を採り入れた対応をしております」という回答は、市側がワークショップ方式の
必要性や効果を一応は認めていることを意味しますが、そうであればここで述べた当会の指摘を受け入れて今からでもすぐに
ワークショップ方式による新図書館建設への取り組みを始めるべきでしょう。

 

B     資料収集の基本方針、中長期方針の提示と専門書の格段の充実―提示もないまま購入数を
増やす対応は不誠実であり早急に提示していただきたい。

 これについても回答はまったく何も答えていません。一方で、口頭で「開館時の蔵書数を実現するため、すでに購入数を
増やしている」(桜井氏)としました。

 当会が求めた資料収集の基本方針や中長期方針を示さないまま開館時の蔵書数(開架冊数でしょうか?)をそろえるために
今から購入数を増やすのは、いま現在の資料収集方針があるとしてそれに従って増やしていることになります。現在の収集方針の
内容をまず明らかにしていただきたい。

 そのうえで、現在貸し出しが多い文学書(現代小説類)を中心にした収集実態に対して、当会はその継続に異議を申し立て、
今後の収集の基本方針、中長期方針として文学書以外の専門書を格段に充実させ、生涯教育、就職・転職時に役立つビジネス
支援も含めて重点にすることを求めてきました。それにもかかわらず収集の基本方針や中長期方針を示さないままに購入数を
増やすことは、なし崩しに現在までの購入実態を続けることに他ならず、蔵書の質を問わずに開館時の蔵書数量確保という
数合わせを優先していると考えざるを得ません。この項目は本文書の「はじめに」で触れたとおり、すでに2002年6月に策定された
基本計画にも図書館サービス水準目標として盛り込み済みの事項であり、以来、1年間が経過しています。今秋にも「整理」して
示すとした検討事項では間に合わない項目であり、今すぐに回答しなければならない(つまりは決定しなければ間に合わない)
事項です。早急にお答えいただきたい。

 なお、朝日新聞は2003年6月16日付で同社が主催した「朝日『図書館を考える』フォーラム『知的市民生活を創れるか、
明日の図書館?!』」(5月25日開催)の概要を掲載しました。そのなかで千葉県浦安市立図書館長・常世田良氏は「私の館
の場合、貸し出しの7割以上は文学以外の多様な本だ」「10年余をかけて大人のための図書館を探ってきた。その結果、
大人の利用が子供の4、5倍になっている」「世界中が情報政策型の図書館にシフトしている」と述べています。
また、青山学院大大学院教授・野口悠紀雄氏は「図書館には無料貸本屋になってくれるな、といいたい。書店で入手可能な
ベストセラーを購入する必要はない」とも述べています。

 また、現本館の蔵書数は2000年度で26万6,135冊(函館の図書館統計による)ですが、基本計画では「現本館における
開架図書は、引き続き中央館に移管して活用する」としています。現本館から新図書館に移管する図書および新図書館開館
までに新たに購入する図書のそれぞれの日本図書分類に準拠した種別、冊数を明示していただきたい。とくに後者の点に
ついては基本計画では「資料の収集にあたっては、全体の蔵書構成と資料の利用動向を考慮しながら選書することが大切な
ことから、専門職としての司書を中心にして、職員が日常的な研鑚を重ね、適切な収集を進めます」(p.39)とあります。「すでに
購入数を増やしている」以上、こうした態勢が出来ており、何らかの方針決定がなければならないはずです。その具体的な名称、
構成員、構成員の資格そして決定内容を明示していただきたい。

 

 U システム面について

 

 @「望ましい基準」の職員数の確保と職員の6割以上を司書資格者に―不足する要員の確保・育成策を
提示していただきたい。

 Bすべてのサービスデスクに常時、司書資格者を配置

 回答は「重要」だが「図書館の効率的な運営体制にも留意していく必要がありますので、今後、これらの整理を行い、
対応」とするもので、ここでも現段階で未整理のままであり「効率的な運営体制」を挙げることで望ましい基準の職員数を
確保することが必ずしも必要不可欠のこととは認識していないことを示唆しています。しかも口頭で「現状で全館では
職員45人、うち管理係の4人を除く41人のうち過半数の21人が司書資格者」であることを説明し、あたかも現状でも
十分であるかのような口ぶりでした。しかし、現本館の職員数は20人(司書資格者8人)であり、望ましい基準の34人の
6割にも満たないことは説明しないままでした。不足するあと14人の職員を新図書館の開館まで2年余のなかでどのように
確保し、育成するのか具体的なアクションプログラム(行動計画)を示すように求めた当会の1月文書には未回答のままです。

 この項目も基本計画に盛り込み済みの事項であり、以来すでに1年間が経過し「整理」の段階はとうに過ぎています。
T@で求めた総括的な工程表とともに、この項目の行動計画を早急に提示することを強く求めます。

 

 A開館日数の増加(年間280日程度)と閉館時刻の大幅な延長(夜8時まで)―今すぐにでも実施
していただきたい。

 回答は「祝日等の開館や夜間開館についても、当然視野に入れて検討していくことにしております」というもので、これも現状では
未整理、未提示なままです。

 この項目も基本計画に盛り込み済みの事項であり、最も初期に決定するべき事項です。しかも、日本のほとんどの公共図書館が
すでに20年も前から実施してきている事項です。現在の本館の貸し出し登録者や貸し出し冊数の逓減傾向に真剣に対処する
考えがあれば、そのなかでこれに歯止めをかけ増大を図るためにも、いままでの開館日数や開館時間では利用できなかった
勤労者などの利用に便宜を図るうえでまず最初に実施するべき課題として挙がってしかるべき事項です。新図書館の開館を
待つまでもなく、今すぐにでも実施するべきことです。早急な回答と早急な実施を強く求めます。

 

C貸し出し者制限の廃止、郵送貸し出し・返却の実施―新図書館開館前にでも実施していただきたい。

 回答は貸し出し者制限については「開館時までに規則等の改正を予定しておりますので、その時点で一定の整理をして
まいりたい」。郵送貸し出し・返却については現在は障害者を対象に一部実施しているが「全ての利用者にこれを実施する
のは難しい」というものでした。

 貸し出し者制限についての回答は1月文書提出時の意見交換で「市民の税金を使う以上、現在の規則(市在住か在勤・在学者が
貸し出し対象でそれ以外の利用者は館長許可)をはずして想定するのは難しい」(桜井氏)という発言より前進したものとはいえ、
新図書館の開館時まで待つまでもなくすぐに実施しても一向に差し支えのない事項です。まして、基本計画の検討事項に
含まれていることでもあります。

 また、郵送貸し出し・返却は障害者ばかりでなく遠方の利用者やお年寄り、子供たちの利用に便宜を図るためにも必要で
あり、郵送料を利用者に一部ないし全部を負担してもらうことで十分可能なことです。いずれも早急に検討したうえで再回答
していただきたい。

 

D返却処理の根本改善―次回「特別整理期間」からその期間を短縮していただきたい。

 「本年5月より、全館において、職員が書棚に戻す方法に変更し、対応」という回答どおり実施されています。
すでにほとんどの公共図書館で実施されていたこととはいえ、当会の指摘が比較的迅速に実施されたことは評価します。

 しかし、実際の運用面では不慣れなことを斟酌してもなおいくつかの問題があります。そのなかで最大で基本的なことは
所定の分類書棚に必ずしも戻っていない例が散見されることです。これには館内利用者が戻し違えた場合もあるでしょうが、
5月20日〜6月2日(2週間、うち定期休館日2日)の特別整理期間直後でも同様でした。また、購入時の分類が必ずしも
適正でない例も散見されます。職員・司書の研鑚、習熟がなお課題として大きいことを示しているものと思います。基本
計画のサービス水準目標にもある「職員の日常的な研鑚」を図るプログラムの策定とその提示を求めます。

 これに関連して、職員が所定の書棚に間違いなく戻す限り、次回の特別整理期間は7〜10日程度に短縮できる客観的
基礎ができたことになります。新図書館でのPC化以前に、現在でもできることとしてぜひご検討いただきたいと思います。
利用者の便宜を考えれば特別整理期間2週間は長すぎ、少しでも早く短縮する努力をするべきでしょう。

 

E受け入れ蔵書資料の製本―次の課題として定期的な清拭・消毒の実施に進んでいただきたい。

 回答どおり「平成15年度から新規購入している本については、装備本(コーティング済み)で購入してお

 り、今後、順次取り組んでまいりたい」。

 当会の指摘したことがようやく実現したわけですが、今後は蔵書の清拭、消毒の定期的な実施とともに、本を大切にする
文化を育てる方策を早急に明示し、徹底を図っていただきたいと思います。

 

F付帯施設利用に過度な規制をしない。

 回答は「管理運営方法につきまして、今後検討していく」。

 T@で求めたように総括的な工程表のなかに含めて早急に提示していただきたい。

 

G使いやすく分かりやすい検索サービス、ネットワークの構築―具体内容の早急な提示を求めます。
インデックスカードは廃棄せずに残置していただきたい。記事検索サービスの提供を追加して
いただきたい。

 回答は「館内の検索機やインターネットで検索できるようになります」。他の図書館等とは「ホームページを開設している
ものについてはそれぞれリンクできるようにしてまいりたい」。他の図書館等との相互貸借は「現在も出来る限り広い範囲で
実施しておりますが、今後もその拡大に努めてまいりたい」。

 この程度の回答内容はすでに基本計画に盛り込まれているものの繰り返しです。具体的に何を、どこと、いつの時点で、
どういう風にするのかをT@で求めた総括的な工程表に含めて早急に提示していただきたい。

 また、回答時の意見交換で「現在あるインデックスカードは廃棄する。したがって検索はすべてPC検索機でしてもらい、
操作は職員が利用者に教える」(市立函館図書館長・中山公子氏)との見解が示されました。しかし、利用者のなかには
コンピューターが嫌いな人、覚えられない人、使いたくない人もいるのが実際です。そうした利用者にもPC検索機を
使うようにいわば強要する結果になるようなことは妥当とはいえません。そのようなことをすれば来館しなくなることも
考えられます。そのため、多くの公共図書館ではインデックスカードも使えるように置いています。

 館内検索はPC検索機だけでなく、インデックスカードも併行して利用できるようにすることを求めます。インデックスカードの
新規追加や更新はPCデータを応用しプリントアウトする方策等を検討すれば省力化も可能でしょう。

 この他、主要な新聞記事や雑誌記事の検索サービスには基本計画でも触れていませんが、ぜひ実現していただきたいと
思います。一例として朝日新聞では公共図書館等向けに「DNA for Libraries」(聞蔵)を月額固定制で提供しており、
1984年以降の本紙、地方版(沖縄県版を除く)、『AERA』などの週刊誌記事を含め今年4月現在で約393万件を収録、
全国で400件以上の公共図書館などが契約しています。

 

H資料収集費を市民1人あたり最低でも500円に―実現に向けた中期計画を提示していただきたい。

 回答は「出来る限り予算の確保に努めてまいりたい」というにとどまっています。1月文書ですでに述べたとおり
資料収集費の大幅な増額は職員数(司書資格者数)、サービス内容とともに「市民の多くが利用したいと望む図書館」を
実現するための必須3条件の1つです。T@で触れた基本計画に盛り込まれた蔵書数、購入図書冊数、購入雑誌・新聞点数を
実現するには現在の資料収集費ではまったく足りません。

 単年度予算決定の制約があるのは承知のこととして、いまから資料収集費を計画的に増額していく複数年の中期計画を
トップレベルで決定していく措置を取るように求めます。こうした具体的な対応をしない限り、回答にある文言は何の保証
にもなりません。

 

I「個人情報保護」を条例化、図書館長の司書資格を条例化―図書館の利用に関する個人情報の保護に
関する市側の回答は条文解釈上あきらかな誤りがあると考えます。回答の訂正を求めるとともに、改めて
条例制定を求めます。

 回答は「図書館の利用にかかわる個人情報については、市の個人情報保護条例が適用され、その保護が図られております」
「地方公務員法においても、職員に秘守義務を課し、その違反に対する罰則も定めておりますので、新たな条例の制定をする
必要はない」。「現行の図書館法においては図書館の多様な運営に対処するため、館長に司書資格を求めておりませんが、
現在の館長は司書資格を有して」いるとしています。

 しかし、この回答には大きな誤りがあります。函館市個人情報保護条例(函館市条例第30号、1990年12月20日制定、
91年6月1日施行)は、第7章第22条第2項で「この条例は、図書館その他の市の施設において、一般の利用に供することを
目的として管理している個人情報の記録については、適用しない」としており、図書館利用に伴う個人情報は適用除外になっています。
その後の部分改正(96年条例33号、2001年同7号、02年同35号)でもこの項目は改正されていません。このような事実誤認は
条例の施行責任を負う部署として非常に重大な問題であり、きわめて遺憾なことです。早急に事実を確認し訂正のうえ責任を明確に
することを求めます。

 また、同条例には罰則がありません。地方公務員法による守秘義務、罰則規定が嘱託者や市の委託を受けた民間業者などに
どこまで厳密かつ十分に適用されるのか定かでない以上、不備だらけの現在の図書館条例を抜本的に改正して個人情報の保護と
違反した際の罰則規定を設ける必要性は少しもなくなっていません。

 さらに、制定当初に図書館長の司書有資格者を求めていた図書館法(1950年制定)をその後改正し、司書有資格を館長要件から
はずしたのは「
図書館の多様な運営に対処するため」というのは名目で、実際には公共事業を景気対策の手段として便宜的に
使うために、館長の司書資格要件をはずすことで公共図書館を新設しやすくすることを狙ったものという見方が多くの識者から
指摘されていることも付け加えておきます。この事実は措いても、公共図書館の機能がどのように多様化しようとも基本は図書文化を
地域に育てることには変わりはありません。その際に司書資格を持たない館長よりも持っている館長の方がベターであることは論を
待たないでしょう。逆に司書資格のない館長では選書はもちろん図書文化の育成に基本的な素養を欠く可能性を避けることはできません。
司書有資格者を図書館長に求めることは必要十分条件ではないにしても現在でも必要条件です。図書館条例を改正してこれを
加えることを改めて求めます。

 

 J市民の声を吸い上げる仕組み(ワークショップ方式)の設置

 TAの後段で触れたとおりです。

 

 V ハード面について

 

@     緑地率30%以上の実現―緑地の個別個所別の面積の提示を求めます。

 回答は「基本設計に基づき、図面上でスケールアップいたしますと、約30%の面積を確保することになっており」
「ご指摘の緑化率は概ね確保できるものと考えております」。

 6月4日回答時の意見交換で、当会が緑地個所を合計で示すだけではなく、個別に示してそれぞれの計算数値を
示すように求めたのに対して、6月25日に別途提示されたのは

建築本体(1F)            4,995u、 42.67%

駐車場                 2,700u、 23.06%

駐輪場・BMアプローチ・ドライブスルー   367u、  3.14%

アプローチ・その他             200u、  1.71%

緑地等(中庭を含む)          3,445u、 29.42%

計                  11,707u、100.00%

という概数の内容に過ぎませんでした。しかも緑地については「緑地等」という表現であって、その意味するところが「緑地を含む残地」を
指すのではないかとの疑いを差し挟む余地を残しています。にもかかわらず、市当局者は当会への回答においても、さらには議会での
答弁においても「緑地率は30%」と再三にわたって強調しています。

 ちなみに6月4日回答時に示された緑地対象部分を示す平面図を基に当会ですべての緑地面積を計算し、緑地率を算出したところ
18.8%であり、回答とは大きな隔たりがあります。どうしてこのように大きな隔たりが出るのかを究明するためにも基本設計の
原図(または無縮小コピー)を提出し、回答時に求めたとおり個別の緑地個所それぞれの面積を示すとともに、その合計数値を示す
ことが必要です。早急に対応するように求めます。

 

A     敷地内樹木の現状保存―文化・歴史認識についての見解は市民感覚から大きな隔たりがあり遺憾です。

 回答はアカマツについては「樹木医の診断により倒壊の危険性があるとの指摘があり」「2月20日に開催し

た基本設計素案に係わる周辺住民説明会の場で住民の了解もいただきながら、伐採した」。

 2月26日に伐採されすでになくなってしまった4本のアカマツについて、いまさら議論を蒸し返すのは不本意ですが、
少なくとも、次の点を明らかにし、反省を求めます。
4本のアカマツは樹木医が倒壊の危険性を指摘したにせよ、それはいますぐ伐採しなければ大きな危険があるというものでなかったことは
明らかである点。函館では台風のたびに毎年30m程度の風が吹き、とくに99年9月25日の台風18号では46.2mを記録しましたが、
それにも4本のアカマツは耐えてきたのです。

 したがって、新図書館の建設にかかわる諸費用から、4本のアカマツを手当てする費用を充てれば、十分に保存することができた点。
それをしなかったのは邪魔だから切るという「はじめに伐採ありき」だったからに他ならないと言うしかありません。建設予定敷地内の樹木
調査すらも当初行わず、当会の世話人の1人からの強い要求を受けて実施した事実からもこれは推定できることです。

 そこから伐採後のアカマツについても、五稜郭築城とともに植えられ140年を超える歴史を刻んできたことに思いをいたすことなければ、
利活用の考えもなく、七飯町鳴川の採石場に埋め立て処分した点。2世木の育成にしても当会などの指摘により行ったことであって、函館市が
自主的に行ったものではありません。140年を超える歴史をもった樹木をごみとして廃棄することしか考えなかった渡島支庁と函館市の対応は
不適切と言うしかありません。新図書館の中庭に記念モニュメントとしておくこともできたはずですし、多くの利活用ができたはずなのにそうした
発想が一切なかったことは、文化・学術の行政に携わる部署としてまことに残念な姿勢であると思います。

 また、保存が決まっているシンジュの樹は新図書館の建物があまりに近接して設計されているため、枝を伸ばす余地に乏しく、これでは
十分とはいえません。VCの再考に併せて万全の保全策を取るように再考を求めます。

 

B     駐車台数の半減―「基本計画での入館者数の算出方法が正しい」とした根拠を明示していただきたい。
市側の駐車台数の想定方法は不適切であると思います。

 回答は「駐車場優先という考え方ではなく、まずは利用しやすい図書館本体の整備が最優先であるという考え方に立っている」
「基本計画策定時に一定の推計のもとに駐車台数を想定した」「現在計画している駐車場スペースにつきまして、この計画台数でも
少ないのではないかというご意見が、中央図書館建設懇話会や周辺町会などから出されている」「開館した際、駐車台数が少ないために、
周辺住宅地内の道路への迷惑駐車されることを出来る限り避けなければならないと考えており、基本設計で予定している駐車台数を
確保し、対応してまいりたい」。

 基本計画が想定した必要駐車台数は次の点から明らかに間違っているか、または意図的に数字を操作していると考えます。

 基本計画では全館の年間貸し出し冊数を市民1人あたり年間6冊、人口30万人で180万冊としたうえで、新図書館の年間
貸し出し冊数を103万冊と想定。

(「6冊」は「目標」―『函館市中央図書館建設基本計画』p.35から)

 次いで新図書館の年間貸し出し冊数を市民1人あたり2冊として、年間来館者(入館者)数を51万5,000人(103万冊÷2冊=515,000)としています。

(「2冊」は「公共図書館を対象にした各種調査結果により」―『函館市中央図書館建設基本計画』p.59から)

 この51万5,000人の年間入館者数を前提に1日入館者数、ピーク時在館者数をはじき出してピーク時の車利用者台数を160台と試算しています。

 しかし、?で全館の貸し出し冊数を市民1人あたり6冊とした以上、?の新図書館でも貸し出し冊数を同様に市民1人あたり6冊としない限り整合性が
取れません。それにもかかわらず、?では実際には市民1人あたり2冊として計算しています。2冊とした根拠は「公共図書館を対象にした各種調査結果
により」としていますが、?で6冊としたこととどのように整合するかは何の説明もありません。

 整合性を取って?でも6冊で計算すれば新図書館の年間入館者数は17万1,667人になります。当然ながら基本計画で想定した人数の3分の1です。
この数字は当会が1月文書で「現状の5倍」の入館者を上限として想定した23万3,324人を下回ります(当会が想定した年間入館者数は年間貸し出し
人数の1.3倍で計算しています。このため現状の5倍の入館者想定の貸し出し人数は17万9,480人です)。この入館者数で基本計画の計算方法に
よりピーク時の車利用者台数を算出すれば54台になります。160台は誤った想定と算出法による過大な数字です。

 ところで、6月4日回答時の意見交換で当会が「基本計画が想定した入館者数の算出方法は間違っている」と述べたことに対して「入館者数の算出
方法にはいろいろあるが、基本計画での方法が正しいと考えている」(生涯学習部施設整備推進担当参事(当時)・清水廣美氏)と答えましたが、
正しいとする根拠は何も示しませんでした。改めて、入館者数の「いろいろある」という算出方法を示したうえで、どのような根拠から他の方法が
正しくなく、「基本計画での方法が正しいと考えている」のかを示していただきたい。根拠を示さずに正しいとするのは批判に対してフェアではあり
ませんし、説明責任を果たしていないことに他なりません。また、この言は当会の1月文書で示した算出方法に対しても、根拠を示さずに正しくないと
決めつけていることになり、不穏当な対応というほかありません。

 なお、年間貸し出し冊数を市民1人あたりの貸し出し冊数で除した数字を年間入館者数と同一とする算出方法は少なくとも図書館関係者の間では
一般的に認知されている方法ではありません。非現実的で実態から乖離した数字になるからに他ならないからです。これについても「正しい」方法だ
としている訳で、ぜひともその根拠を伺いたいと思います。

 

C     角地ブロックの建蔽率の緩和―要求趣旨を正確に理解して再回答することを求めます。

 回答は「建蔽率の対象となる敷地は、建築基準法上、敷地の底地のほか、附帯する駐車場や緑地などを含めた建築物の用途上、不可分となる
一団の敷地全体に対する規定であり、敷地の一部分に対する規定ではありません」「現段階での建蔽率は約47%となっており」建基法の
上限である70%を超えていないので問題がないとしています。

 建築基準法上の規定は承知のうえなので改めて解説してもらう必要はありませんし、建基法に適合しているかどうかを問うているわけ
でもありません。当会が問題としているのは、1月文書で指摘したとおり、施設面積のうち角地を含むブロックだけ70%の建蔽率であり、
他のブロックが52%であるのに対して格段に周辺住民に圧迫感を与えていることを問題にしたものです。建基法は最低の基準を定めた
ものであり、それに適合しているから十分というものではありません。公共施設である限り近隣住民との良好な関係を保ちつづける配慮が
あってしかるべきであり、設計変更も可能であることを指摘して角地ブロックの建蔽率を最高でも60%以下とするように求めたものです。

 なお、五稜郭町内会などの周辺住民を対象に開いた説明会は同町会が近隣住民のすべてを代表するものではないこと、元々同町会長など
役員の一部が説明会の開催を不必要と表明していたこと、開催手続きに大きな不備があり「新図書館の周辺環境を考える住民の会」が
2月13日付で抗議文を提出済みであることなどから、説明会の内容がどうあろうと本質的には当会とは関係ないことです。当会はいまだに
了解していません。したがって、函館市は当会に対する説明責任を未だに果たしていない事実には何らの変化もありません。
改めて再考を求めます。

 

D     プライバシーに配慮した閲覧室の確保―閲覧席の「オープンな読書コーナー」方式は時代認識とニーズの
とらえ方を誤っています。基本設計を抜本から見直して区切られた静寂な環境の閲覧室設置を求めます。

 回答は「開架からの使い易さを前提に、オープンな読書コーナーが主体」「コミュニケーションルームやグループ研究室、個室研究室などは、
仕切られた読書席として設ける」「一部の対面式閲覧机にはプライバシー保護の硝子を設置するなど、検討」「2階に設けるレファレンスコーナー
や読書テラスなどは、一般開架と切り離しており、静寂な環境で読書が出来る」「学習室の設置は特に考えておりません」。

 回答にある「オープンな読書コーナーが主体」の配置は貸し出しを最重視して長時間の館内読書や調べ物による利用をほとんど
考慮しない10年前の発想法であり、時代のニーズが最近10年間で変化していることを認識しているとはとても思えません。

 先に引用した朝日新聞2003年6月16日付「朝日『図書館を考える』フォーラム『知的市民生活を創れるか、明日の図書館?!』」
記事で千葉県浦安市立図書館長・常世田良氏は「利用者の半数近くは2時間以上館内にいて、10人に1人は開館から閉館間際
までいる」「複数の本を並べて横断的に必要な個所だけ情報収集的に読む人が増えてきた」と発言しています。
また、青山学院大大学院教授・野口悠紀雄氏は「公共図書館にはまず本を読む環境をつくってほしい。自宅に書斎を持つ人は
少数派だから、読書の場がない人のために場を提供するのは最大の使命だろう」とも述べています。

 「オープンな読書コーナー」は館外借り受け前の所謂「ちょい読み」の場に使うことを前提にしています。1月文書でも指摘したとおり
開架スペースと仕切った閲覧室としない限り、開架書棚を利用する者の通行、騒音に曝されたなかでじっくり読書することも
調べ物をするのにも不適当です。「オープンな読書コーナー」は「「開架からの使い易さ」があることを強調していますが、ここに挙げた
欠陥もあることを本当に考慮したのでしょうか?逆に壁で仕切った独立した閲覧室を設けることが「開架からの使い易さ」に欠陥を
もたらすというのであれば、その根拠を明示していただきたい。

 「オープンな読書コーナー」のうち「一部の対面式閲覧机」に「プライバシー保護の硝子を設置」したところでもっとも肝心な静穏な
環境が保持されなければ、じっくり読書したり、調べ物をするうえではほとんど意味をなしません。しかも基本設計図を見る限り、
「プライバシー保護の硝子を設置」した「対面式閲覧机」は10人分にも満たない数しか用意していないのはどういう理由に」
よるものでしょうか?その根拠を示していただきたい。

 また、コミュニケーションルームは字義どおり理解すれば読書のためのものではなく、おしゃべりのための部屋であって、だからこそ
基本設計図では仕切っているのでしょう。このような部屋が果たして本当に必要なのでしょうか?仲間同士で話があるのであれば
軽食・喫茶コーナーやエントランスロビー、寒い季節以外なら中庭や館外に出て話せばいいでしょう。
本質的には不必要なものであることは明らかでしょう。

 グループ研究室はこれも字義どおりグループで使うものであって、個人が使えるものではありません。

 さらに2階のレファレンスコーナーや読書テラスは基本設計図を見る限り1階の騒音とくに児童、青少年開架コーナーや
AV・コンピューターコーナーからのキーボード音などが、上がり天井の傾斜に沿って反響して腰壁上部の開放空間から集中して
進入してくるのを避けられない構造になっています。たとえ天井などに吸音ボードを貼ったところでその効果には限界があり、
とても「静寂な環境で読書が出来る」状態ではないことはいまから十分予想できます。わたし達の知る限り多くの図書館では
児童、AV・PC向けのスペースは発生が避けられない騒音に配慮して、いずれも壁で隔離し独立した部屋になっているのが
通常であり、オープンスペースの一角にコーナーとして設ける簡易な構造にはなっていません。

 こうして検討してくるとじっくり読書したり、調べ物をしようとする利用者は2階の「個室研究室」を使うしかありませんが、それは
わずかに9人分しかありません。しかもこの「個室研究室」はいわば設計上のデッドスペースを利用したものとしか考えられず、
本質的には不必要です。騒音から仕切られた静穏な環境を保てば十分であり、個室ではなく閲覧室としての十分なスペースと
そのうえでのプラーバシーの保護を確保することが本質です。個室の場合は事故が起こった場合の安全対策や不適正な悪用も
想定しなければならず、不必要で過大な費用負担も考えられます。

 なお、1月文書では「学習室の設置」を求めていません。「受験生にも一定の静寂な閲覧室スペースを確保することを求め」た
のであって、「静寂な閲覧室」を設けることが本質であり、その中に一定の割合で受験生の優先席を設けることを求めたものです。

 総合的に、当会が1月文書でおおいに危惧したとおり閲覧スペースがちょい読みや立ち読みを前提にし、じっくり読んだり調べ物は
図書館ではなく、貸し出しを受けて自宅ですることを基本にした計画になっています。現在はもちろん将来の図書館ニーズ・シーズに
まったくそぐわない構造になっていることは明瞭であり、きわめて遺憾です。このことはまた、資料の収集方針がちょい読み用、
立ち読み用が中心となることへの懸念を強めることにもなります。このような基本設計案はとても認められません。全面的に
抜本から見直すことを求めます。

 

E 再生可能性エネルギー、雨水利用の導入―ソーラーパネルの具体内容とコスト計算、雨水利用導入を
否定した根拠となるコスト計算などの提示を求めます。

 回答は「太陽光発電システムの導入を検討」「雨水利用(中水道利用)については、トイレの洗浄水や樹木への散水等に利用するもので、
本州方面での渇水対策のために用いられている」「北海道や当市においては、気候的にもほとんどその心配がなく」「雨水用の水槽や
ろ過装置などの諸設備、さらに毎年の清掃・消毒等の維持管理なども必要になるなど、設備費やランニングコストなどの経費の問題もあり、
その利用は考えておりません」。

 ソーラーパネルを設置することを検討していることは基本計画では触れられていなかったことであり、1つの前進ととらえます。そこで設置
場所、出力数、発電した電力の利用方法、設置の初期費用と維持管理費用を早急に明示していただきたい。また、発電状況を館内に
表示して図書館利用者にわかりやすく宣伝することを検討していただきたい。

 雨水利用は導入する考えがないことを回答していますが、その根拠として挙げた?本州と違って北海道や当市では気候的にも渇水対策は
ほとんど心配がないとした根拠?設備費やランニングコストの試算または見積もり根拠の数字の2点を早急に明示していただきたい。

 なお、本州とくに東京などの大都市部での雨水利用は必ずしも渇水対策を第1の眼目にしているとは限りません。都市下水処理への
負荷軽減、川への負荷軽減、海の汚濁軽減、地下水の涵養、地盤沈下を防止するための地下水くみあげ規制への対応など多岐に
わたっています。こうした多くの目的があるなかからとくに先に挙げた2点を取り上げて導入を明確に否定したにはそれなりの説明できる
根拠を持っていて当然でしょう。とくに、一方ではソーラーパネルについては、残念ながら未だに高いコストや減価償却の長さなどの
問題点を示さずに導入の方向を示したことと整合を図る必要があります。

 

  F 維持管理、大規模修繕費見込み額の提示―標準仕様を中心とした数通りの試算・見積もりの提示を求めます。

 回答は「今後、実施設計における電気、空調等の方式が明らかになった段階で検討する」。

 実施設計までの今後数カ月間に革新的な技術が実現することが確実に想定されるのでもない限り、少なくとも現在想定できる2、3通りの
仕様(標準とその上級、下級)で試算、見積もりを出させることは十分可能のはずであり、必要なことです。また、維持管理費や大規模修繕費も
不分明なまま計画を進めていこうとする手順には大きな疑問と将来への危惧を持たざるをえません。少なくとも、民間ベースではまったく
考えられないことです。

 とくに、公共施設は建築時には国や地方公共団体の高い比率の補助があっても、築後の大規模修繕費や改修費には補助率も低く、
維持管理費や運営費は運営主体である地方自治体の単独負担が通常である以上、早い段階でそれらの目安を出して対応策を
取ることが必要です。新図書館の維持管理・運営費、大規模修繕費について函館市にはおのずから負担できる適正な額や限界が
あります。その如何によって実施設計の内容も変わらざるをえません。これらの築後の費用負担を早期、事前に適正に算出、対応するこ
となしに、つくったはいいが十分な維持修繕費や運営費を手当てできずに開店休業になったり、縮小を余儀なくされる公共施設が各地に
目立っています。

 前記した方法で早急に維持管理・運営費、大規模修繕費の試算・見積もりを提示するように求めます。


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以上